溶射封孔用途
硬化したパーミエイト
塗装やめっきとは異なる手法で、鉄鋼等の素地を保護する「溶射」とパーミエイトの関係は?
「パーミエイト」で溶射皮膜中の微細孔を封孔することで、皮膜の性能を格段に上昇させることができます。

溶射皮膜の性能を完全に引き出す封孔剤

耐食性、耐磨耗性、耐絶縁性、耐薬品性等を改良するために使用されている溶射は、金属、セラミックス、プラスチック等を溶かして吹き付けることで積層させるため、積層した皮膜にはミクロンサイズの孔が空いていますが、この微細孔を塞がないと目的とした性能が達成できません。

そこで登場したのが無溶剤1液型無機系封孔剤「パーミエイト」。溶射後の皮膜表面に塗布するだけで、全ての微細孔を塞ぎます。


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パーミエイトの一番の特長は何ですか?
パーミエイトは、ミクロンオーダーの小さな孔でも奥深くまで浸透し、空気中の水分と反応して硬化し無機系ポリマーとなることで、微細孔を完全に塞ぎます。

すべての微細孔を塞ぎ素地を完璧にガード

パーミエイトは、微細孔の奥深くまで浸透し硬化することで孔を塞ぎ、素地にダメージを与える原因となる水やガスの浸入を完全にシャットアウトします。「パーミエイト」が封孔に成功した最小径は40nm(1nmは1mmの100万分の1)。実に毛髪の約2000分の1の孔まで塞ぐことが可能です。


EPMA元素マップ分析

EPMA元素マップ分析で実証!パーミエイトの封孔力

パーミエイトの浸透硬化によって、微細孔が完全に封孔されていることは、約100μm厚さのZn-Alアーク溶射皮膜のEPMA元素マップ分析(左図)や、Al-Y-Coのプラズマ溶射皮膜の電子顕微鏡評価等にて証明されています。


1)H.Kanematsu,Dana M.Barry, Paul McGrath, A.Ohmori:“Corrosion Protection of Metal Spray Coating By Using An Inorganic Sealing Agent For Its Micro-pores”, International Thermal Spray Conference & Exposition, Osaka, Japan,May 10-12 (2004)

2) Y.Kato, D.C.Van Aken:“Salt Fog Corrosion Testing of Al-Y-Co based Nano-crystalline and Amorphous Coatings Produced by Atmospheric Plasma Spray”, The ASM international Surface Engineering Congress and Exposition Orland (FL2004)


今までの封孔剤とどう違うのですか?
無溶剤なので微細孔を完全に塞ぎ、封孔と塗装が同時にできます。

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無溶剤だから微細孔を完全に塞ぎ、環境に優しい

今までの封孔剤は、固形分が10〜15wt%※となるよう塗料をアルコール、シンナー等の溶剤で希釈して使われてきました。しかしこれらの塗料希釈型封孔剤は、粘度が低いので微細孔へよく浸透する一方、右図の通り溶剤が蒸発した跡が空洞となり、微細孔を完全には塞げません。そのため、溶射皮膜の性能を上げられないこともおこり、更には蒸発した溶剤が環境に悪影響を与えていました。しかしパーミエイトは、無溶剤でありかつ粘度も低いので、微細孔へ浸透してすべてが中で固まり無機系ポリマーになりますから、微細孔を完全に塞げます。もちろん無溶剤なので、環境に優しい封孔剤です。

※ wt%:ウェイトパーセント。溶液中の固形分の質量割合

封孔と塗装が同時にできる着色封孔剤

従来の塗料希釈型封孔剤は着色できないため、封孔と塗装は別工程で行われていましたが、パーミエイトを使えば同時に完了。パーミエイトの主成分のみが微細孔に浸透し、顔料は溶射皮膜表層近くの大きな孔と塗膜に留まります。なお、ニーズに合わせたあらゆる色味をご提供できますし、塗膜が不要の場合は、クリアー(顔料を分散していない無色透明製品)を塗布し10〜15分後に表面をウエスで拭き取れば、塗膜無しで封孔のみの仕上げに対応できます。

無機系ポリマーだから、耐熱性、電気絶縁性、耐紫外線性等が抜群

フッ素樹脂とパーミエイト

パーミエイトは硬化して-Si-O-Si-O-の無機系ポリマーとなるため、これまで、最も紫外線に強い塗料とされていたフッ素樹脂塗料以上の耐紫外線性を有しています。さらに、約500℃の耐熱性、シリコーン樹脂並みの電気絶縁性も兼ね備えており、パーミエイトは今までにない画期的な性能を持った封孔剤といえます。


さらに深く、より微細な孔を封孔することはできるのですか?
パーミエイトの成分と硬化反応速度を変えることで、より深く、より微細な孔も塞げます。40nm径の封孔も実現!

さらに微小な孔へ深く浸透する特殊グレードを開発

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「パーミエイト」は、塗布・浸透と同時に硬化反応を開始しますので、徐々に液粘度が上昇し、ある時間を経過した時点で浸透が停止します(右表)。一方、塗料希釈型封孔剤は溶剤の蒸発が遅いため液粘度の上昇が遅くなり、より深く浸透できます。そこで、弊社では、初期液粘度及び硬化反応速度をより低くすることで、汎用の「HS-100」に比べ、より微細な孔に浸透させることが可能な特殊グレード「HS-80」を開発。最小径40nmの微細孔封孔に成功しました。プラズマ、HVOF(高速フレーム)等緻密な溶射皮膜の封孔に活用いただけます。

※ 「HS-80」は、得られるポリマーが非常に硬くなりクラックが生じやすいため、塗膜を必要とする場合への適用は難しく、封孔のみでご使用ください


どのくらい塗布すればいいのですか?
パーミエイトなら、少しの塗布量で効果を発揮します
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封孔だけなら10〜30g/m2

溶射皮膜への浸透量は、皮膜の緻密さによりますが1〜15g/m2ぐらい。塗布後10〜15分後、浸透していないパーミエイトをウエスで拭き取りますから、塗布量は浸透量+10g/m2程度で充分。


着色封孔なら150g/m2

溶射皮膜の凹凸が大きいと、凹部を埋めるためにたくさんの量が必要になります。溶射皮膜の凹凸差を80μmとすれば、150g/m2を付ければ綺麗な塗膜になります。


今までの施行事例を教えてください。
紫外線に強く、施工時と変わらぬ色艶を維持するパーミエイトは、以下のような所で使われています。
パーミエイト施工事例 神戸空港進入灯橋梁 ■Alアーク溶射/封孔  H15年施工 エンジンの給排気バルブ ■溶射/封孔 福岡都市高速橋梁 ■Zn/Alアーク溶射/封孔 H15年施工
第2京阪道路防護施設 ■Zn/Alアーク溶射/封孔  H15年施工 製紙機械用ロール ■	溶射/封孔 六本木ヒルズレジデンス 防風スクリーン ■Zn/Alアーク溶射/封孔  H16年施工

【技術資料PDF】
「防錆防食アーク溶射の封孔」に関する研究論文(英文)
"Corrosion Protection of a Metal Spray Coating By Using An Inorganic Sealing Agent For Its Micropores"
「プラズマ溶射の封孔」に関する研究論文(英文)
"Salt Fog Corrosion Testing of Al-Y-Co based Nanocrystalline and Amorphous Coatings Produced by Atmospheric Plasma Spray"